TOKYO TOWER PROJECT.

『SD』の1988年3月号を手に入れました。

「TOKYO TOWER PROJECT」という特集で、「40才前の建築家 40人の描く40本の東京の塔」が掲載されています。

東京タワー,
三愛ドリームセンター,
塔の家,
忠犬ハチ公銅像
近代の東京に建立された
4本の塔(タワー).
それらは,ある時代なり文化的状況なりを
象徴的に表してきたが,
今ではそれらを支えてきた精神,思想は風化に遭い,
それゆえに,
成立時の流動的で不安定な状況が消し去られ,
まさに象徴として
モニュメントとして
人びとの意識に定着しつつある.
東京を舞台に活躍する,
40才前の建築家,インテリアデザイナー40人が,
これら4本の塔をテーマに
自由に想像力を働かせ,
40本の幻想を描きだす.
そこでは,
東京の過去が慎重に透視され,
現在の様相が鮮烈に投影され,
未来の行方が大胆に
予見されよう.
(本書より)

もともとは87年の12月にアクシスギャラリーで開催された展覧会で発表されたもので、東京タワーなら東京タワーで10人という感じで、ひとつのテーマで10個のドローイング、全部で40のドローイングが掲載されています。

登場している建築家は以下のとおり。

・東京タワー
原尚/大野秀敏/竹山聖/シーラカンス内藤廣/高崎正治/北川原温/八束はじめ/入江経一/森田正樹
・三愛ドリームセンター
沖健次+渡辺妃佐子/坂茂/菱沼利行+海老塚耕一/飯島直樹/近藤康夫/武田光史/伊坂重春+佐藤道子/堀池秀人/板井宝一郎+西島裕
・塔の家
増田実+米田有/パルフィ・ジョージ/川村正士/ワークショップ/緒方四郎/井上瑶子/渡辺誠/芦原太郎/木村丈夫+野田俊太郎/新居千秋
忠犬ハチ公銅像
小山明/隈研吾/石田敏明/フェイズ・アソシエイツ/リシャール・ブリア/飯田善彦/荒知幾/彦坂裕/團紀彦+青島裕之/北村修一
(南洋堂 書籍紹介より)

気になったドローイングを3つ。


内藤廣さん。
都市の残滓として現れることになるお墓のタワー「死の塔」だそうです。
東京タワーをテーマにしたドローイングのなかで、内藤さんのものだけが尖塔型ではなく、姿形ではない部分を描いている印象。かつ、恐ろしくて、格好いい。
「東京の過去」という前文を考えたら、いちばんかと。



川村正士さん。
「大多数のサラリーマンにとって、住居を持つことは、都心・郊外に関係なく、絶望的である。そのような大それた夢を持つこと自体に、また重税が掛かる恐怖感を覚えてしまう」として、「壁にへばり付く現代の農民」と題したドローイング。
塔の家をアイコンとして使うドローイングが多いなかで、まったく違うアプローチで、レトロゲームのイメージがありました。一方で、住宅の要素が分離している様子は現代の住宅系の建築家の雰囲気を感じます。塔の家をモチーフにしながらも、時代を先取りしたドローイング。



隈研吾さん(右頁の左)。
「ハチ公もまた塔であるならば,脚が必要であり,胴体が必要であり,頭が必要である.そしてすでに私はその脚の原寸図を入手している.」とした犬の足跡のドローイング。
東京タワー、三愛ドリームセンター、塔の家はどのように建築から離すかに主眼が置かれているのに対して、ハチ公をモチーフにしたものは、どのように建築と結びつけるがポイントなのかと思いました。その中でも隈さんのは飛び抜けているように感じています。ドローイングそのものは、一番建築と関連性がないように見えるのに、シンプルなドローイングとシンプルな解説によってとても力強い印象を受けます。


いい買い物しました。