アラヴェナ展に行ってきた。

結局オペラシティではなく、ギャラリー間に行きました。『アラヴェナ展 フォース・イン・アーキテクチャー』

 「フォース・イン・アーキテクチャー」という副題は、直訳すると「建築における力」。会場では、ルート記号(√)のように組まれた大きな材木が目に付く。建築模型を展示する棚だが、力学的にありえない形状は、天井から細いワイヤでつることで成立している。「浮遊感ではなく、重力を感じてもらうのが狙い」とアラヴェナさん。

 「最近の建築は、軽さや透明感を求めすぎている。重力抜きの建築なんてあり得ない。流行しているガラスだって、じつはとても重い素材です。建築家は頭の中でなく、外側の『力』に素直であるべきです」

 このほかにも、浮力や磁力を利用した展示が続く。普段はあまり意識しない「力」の存在を、鑑賞者に気づかせるような仕掛けだ。かつてデザインした有名な作品「チェアレス」もそのひとつ。南米の先住民族の道具から着想を得て作られたイスで、ベルト状の布が輪になっている。アラヴェナさんは自ら実演しつつ、膝や背中に加わる力を利用する仕組みを説明してくれた。イスの機能を最小限の要素で成立させ、これ以上なくなると消えてしまう。

「デコラティブ(装飾的な傾向)は好きじゃない。でもミニマリズム(最小限主義)も嫌い」だという。「単純化は、取り組むべき問題まで省いてしまうことが多い。わたしはシンセティック(統合する)という言葉を使います。問題は全部受け入れて解決する」

 建築のデザインには、経済的な力、社会的な力も大きな要素だ。貧困層のための集合住宅は、アラヴェナさんが大きな成果を上げ続ける仕事のひとつ。昨年のチリ地震で大きな被害を受けた沿岸部の町の復興にも携わっている。

 「建築は鏡のようなもので、社会のさまざまな現実を映します。さまざまな強い力を、止めるのではなく、正しい方向に向けることが建築家の仕事ではないでしょうか」

アレハンドロ・アラヴェナ展 「建築は“力”を正しい方向に向ける」http://sankei.jp.msn.com/life/news/110825/art11082507440003-n2.htmより


「建築における力」ってタイトルですけど、正直とてもいいと思います。展示にもありましたけど、アラヴェナはチームを組んだり行政と一緒に問題に取り組むことで、建築には社会を変える力が備わっているってことを十分に示しているし、関わった全員に対していい影響を与えている。プロジェクトに関するビデオを流すこと自体は珍しくないけど、内容は良かったと思う。そのプロジェクトも別段珍しいものではないけど、実現させているのは素晴らしいと思う。


全体の感想としては正直いって、心にガツン!とくるものではなかったけど、スマートでイイ感じの展示でした。

それに、あらためてチリの建築は日本に似てるってことを感じました。前々から言ってることだけど、建築の造形そのものもそうだし、建築に取り組む姿勢にも近しいものを感じています。PEZO VON ELLRICHSHAUSEN ARCHITECTSの建物やインスタレーションアトリエ・ワンに似ているし、アラヴェナの建物も私見では隈さんとかに近いものを感じるし、藤村さんが提案していることを既に実践しているような感じもする。批判的工学主義だっけ、そんな言葉の遊びはしないで現実を見てる感じも好感をもてる。

展示されていた言葉を思い出しながら書いていますが、アラヴェナは建築の造形に恣意的なものが入る余地を極力減らそうとしているとありました。敷地の条件なんかも含めて、建築のコストパフォーマンスを意識しているのには好感を持ったし、そうは言いながらも造形に気合が入っているのがいい。

チリの住宅政策がどんなものかは詳しくありませんが、限界を決めたり与条件として上から与えられるものと、積極的にプログラムに持ち込んでいくのとでは、全く異なるデザインが出てくるんだっていう好例だと思いました。

ちなみに、同時発売されていたアラヴェナの本は一回あったことのあるデザイナーさんが装丁をしていたらしい。早く知ってたらギャラ間で買ったのにな。


そうそう。上階の展示室に本が置いてあったんだけど、アラヴェナは歴史書の編集にも参加していたようです。アラヴェナを含む3人の編集者(editってあったから著者ではないはず…)によるもので、それこそギリシャとかローマのオーダーの挿絵とか入ってたり、ブルネレスキの建物の挿絵なんかが入っていて、古代の建築文法を踏襲したうえで設計をやってるんだったら素晴らしいです。格好よすぎます。