「イームズ入門」の感想文【その1】

先日購入した「イームズ入門 チャールズ&レイ・イームズのデザイン原風景」(原題「An Eames Primer」)ですが、ちょっとずつ感想を書いていこうと思います。


まずは書籍の表紙になっている画像についてわかっていることを。
こちらは、映画[パワーズ・オブ・テン]の撮影風景だと思います(本書ではイームズの作品が[ ]で囲われていたので、これに則って書いていきます)。

チャールズとレイは多くの映画を撮っていて、イームズデミトリオスさんは百何本のストックがあると言っていた気がします。彼らが映画を撮影していたことすら知らずにいましたが、撮影されたジャンルも建築やデザインから、おもちゃなどの小さいものまで多岐にわたっているようです。

展覧会でも流れていた[デザインQ&A]という映画は、チャールズとインタビュアーの対話形式のもの。5分程度の短い作品ですが、デミトリオスが「こう言っては少々誇張になるが、この映画を見れば、イームズのデザイン哲学の半分が理解できる(チャールズのデザイン・ダイアグラムで残りの大半が補われる)」(P.171)と述べるほど。こちらの映像やダイアグラムについても、のちのち書くことになると思いますがとてもおもしろいです。端的にまとめると、デザインは「制約」と「必要」のせめぎ合いだということでしょうか。



多くの映画を撮影していることは本書のなかで語られていきますが、表紙に使われた[パワーズ・オブ・テン]はとても有名な作品だそうですね。残念なことに私は全く知りませんでしたが。

とりあえず、YouTubeにあったのを持ってきたので見てみてください。

シカゴのミシガン湖の近くでピクニックをする男女の俯瞰風景からはじまり、カメラがだんだんと遠ざかっていきます。画面は1メートル四方からはじまり、遠ざかっていって10のるい乗、もしくはべき乗の指数が増えるごとに四角い枠が出てきます。シカゴ、ミシガン湖アメリカ、地球、太陽系、銀河と広がっていき、今度は男の手に向かって近づいていきます。

はじめの方のページには「もはや古典ともなった彼らの短篇映画[パワーズ・オブ・テン]を通じて、チャールズとレイの仕事に触れた人も多いだろう。それは考えるための道具であり、文字どおり意識を拡張するための装置であった。この映画を10歳のときに、たいていは小学校の科学の時間に初めて見た人たちは、そのときの印象を大人になってからも鮮明におぼえている」(P.11)とありますが、アメリカ人のスケール感覚にはこの映画が深く根付いているのかなと思いました。1977年に製作されたようなので、35年も見続けられたってことか。

アメリカっていうのとスケールの拡張っていうことでパッと思いついた勝手な想像ですが、バックミンスター・フラーとの関係ってあるんでしょうか。フラーが 1895年生まれで、チャールズが1907年生まれなのでひと回り違うみたいですね。よくわかりませんが、そういう時代の流れがあったということなのか、みんな同じ方向を向こうとしていたのか。


表紙に使われた写真は「イームズ入門」という言葉のために別段なんでもないワークショップの風景のように感じられますが、[パワーズ・オブ・テン]の内容を知っているといろいろなことを予期させる写真だといえます。